前回vol.1では、アール・デコとモード展の概要をご紹介しました。続く今回は、撮影可能な展示室の作品を中心にご紹介します。
ファッションだけでなく、絵画やテキスタイルなどもたっぷりと展示されており、とても満足度の高い展覧会。ご紹介し切るのは難しいので、ぜひ実物を見に行ってみてください。
装飾美から機能美へ。移り変わるモード

序盤には、アール・ヌーヴォー期の特徴ともいえる、ウエストを細く絞るコルセットや曲線のラインが印象的なドレスが展示されています。
装飾美を追求したフリルやビジューなどがたっぷりとあしらわれた「お姫様の服」と形容して不足ない、幼き日の憧れが眼前に。

歴史的にはお姫様のというばかりではないのですが、レース生地のティアードの袖や、地面を引き摺る長さのスカートなどは、一度くらい憧れるものです。後ろ姿まで抜かりなく美しい……。

時は流れて。アール・デコ期に入ると、装飾や布の分量は大幅に減り、体のラインの目立ちにくい直線的なデザインのドレスへと流行が移りました。
社会情勢の変化から、女性の社会での活動も増え始め、華美に飾ることよりも機能性が重視されるようになります。

少し丸みを帯びたコクーン状からコンパクトなフレアに戻っていくラインの、なんともいえない美しさ。
ウエストからのゆったりとしたフレアのラインをレースを挟んだ切り替えでストレートにまとめ、でもしなやかさを感じさせる裾は、歩くと美しく揺れるのでしょうね。
あまりにも煌びやかな世界

Chapter2−2の展示室はもうとにかくキラキラ! あまりの眩しさに思わず目を細めてしまうほど。
絢爛と言うに相応しい豪奢な装飾が施されたドレスやコート、ショールなどをたっぷりと見ることができます。
美しいのは装飾のみならず、お洋服のディテールも。ウエストのラインやドレープの加減などは計算し尽くされているのだろうと感じられ、ため息がもれるばかり。
アール・ヌーヴォー期に比べて低い位置に作られたウエストラインからスカートの裾に向けてのラインの美しさは、360度ぐるりと見られることのありがたさを噛み締めるものがありました。こんなに綺麗なラインがありますかね。うっとりしちゃう。
芸術家との協働が魅せる華やかなテキスタイル

画像中央の格子に大ぶりなベゴニアをデザインした意匠は、ポール・ポワレ主宰のテキスタイルとインテリア・デザインのアトリエ「マルティーヌ」によるもの。これは定番デザインで、生地と共に壁紙も作成されました。
アール・デコ博覧会の壁紙にも用いられており、画像左の写真の背景に写っています。大胆なデザインなのに、前に写る人物がきちんと主役になっていて、デザインとしての優れたバランス感を表しているように感じます。
キュビスムとの交錯。ソニア・ドローネーの描くモード

キラキラとした展示室の奥に直線と色彩が目をひく絵画の展示が。もしかして……と近づいてみると、ドローネー! キュビスムの時代を代表する作家ロベール・ドローネーと共に歩んだ、ソニア・ドローネーの作品が展示されています。好き!
夫のロベールは絵画作品を多く制作しましたが、妻のソニアはテキスタイルデザインも多く手掛けていました。まさかここで、ソニアのデザインに出会えるとは!

アール・デコ期の、体のラインを拾わない直線的なデザインのドレスやコートに、キュビスムの直線的・平面的なデザインのテキスタイルがマッチ。

日本で1960年代に流行したモダンガール的なデザインを彷彿とさせます。1920年代のモードのリバイバル的な流れと考えると、源流のひとつだったと言えそうです。

直線を曲線的に配したデザインのコート、なんて美しい……。かわいいよー! おしゃれ!
お帽子と足元にポップな色を合わせて軽やかに着こなしたいですね。同系色のアイテムでまとめて、お化粧で色をさすのも素敵かもしれません。あぁ美しい……。
緻密な線で描き出されたラウル・デュフィのテキスタイル

こちらも印象的なデザインのテキスタイル。大きなモチーフに細かな描き込みで、陰影だけでなく色合いまで見えてくるよう。

画像の4作は、20世紀最大のモード誌といわれる『ガゼット・デュ・ボン・トン』(1920年第8号)に掲載されたもの。
緻密な描き込みで、引きで見ると美しい色調のテキスタイルだなぁという印象ですが、近づいて見るとそれぞれに描かれているものが明確にあり、テキスタイルデザインの妙を、これでもかと感じられます。
お洋服の発する雰囲気もメゾンそれぞれ

現代のモード界には、1910年代からファッションの変遷を描き続けるメゾンも数多あります。
中でも特に好みだったのが、シャネルとマドレーヌ・ヴィオネ。実物を目の当たりにし、個人的には凛とした自律的な印象を抱きました。
シャネルの芯のあるかわいらしさ

ワントーンの巧みな扱いに、ちょっと奇声を発しそうなかわいさがあります。語彙力を疑われようとも、もうかわいいしか出てこないんですよ、あのドレスたちを前にしたら!
オールブラックなのに、切り替えによって生まれる表情があったり、ブラックの本体にブラックのコードで描かれる模様がゴッホの星月夜のようだったり、とにかくブラックも美しい。
モノトーンのアンサンブルも展示されており、シャネルのコアとなる精神性と並んで、お洋服の幅の広がりも感じられます。
マドレーヌ・ヴィオネの圧倒的気品

いわゆるハイブランドに疎い筆者は初めましてのメゾンでしたが、圧倒的と言うに相応しい、溢れ出す気品のオーラがすごい。トルソーが着ているお洋服なのに、オーラがある。すごい。
大きな装飾があるとか派手な色合いや柄使いというわけではなく、ディテールが空気を変えて魅せるという印象。
着こなせるのは相当にしなやかで強靭な芯を持った女性なのだろうな、と感じさせる雰囲気があります。美しい。似合う人間になりたいと強く感じました。
現代のモードへ通ずる流れを一挙に見られるのは1月25日まで

アール・ヌーヴォーからアール・デコへの転換から、現代のモードへと続くファッションの変遷が一挙に見られる『アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に』。
会期終了が迫っていますが、まだ見ていない方はぜひ足を運んでみてほしいと感じる企画展です。ファッションだけに留まらず、時代や社会の変化が与える影響をぜひ感じてみてください。
今、自身が何気なく纏っているその服も単なるファッションではなく、時代や自己の内面的な役割を反映していることを感じられるかもしれません。
次回、vol.3では、目の当たりにしたファッションのしなやかさを、まるごと抱えて帰れるグッズたちをご紹介します。
『アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に』
⚫︎会期
2025年10月11日(土)- 2026年1月25日(日)
⚫︎開館時間
10:00-18:00
金曜日と会期最終週平日、第2水曜日は20:00まで
※入館は閉館の30分前まで
⚫︎休館日
祝日・振替休日を除く月曜日
会期最終週の1/19は開館
⚫︎観覧料金
一般 2,300円
大学生・専門学校生 1,300円
高校生 1,000円
※価格はすべて税込
※障害者手帳をお持ちの方は半額、付き添いの方1名まで無料
お得なチケット情報の詳細はこちらをご覧ください。
⚫︎アクセス
・電車
JR「東京」駅(丸の内南口)徒歩5分
JR「有楽町」駅(国際フォーラム口)徒歩6分
東京メトロ千代田線「二重橋前〈丸の内〉」駅(1番出口)徒歩3分
東京メトロ有楽町線「有楽町」駅(D3/D5出口)徒歩6分
都営三田線「日比谷」駅(B7出口)徒歩3分
東京メトロ丸ノ内線「東京」駅(改札口・地下道直結)徒歩6分
・バス
最寄の停留所は「東京国際フォーラム前」
三菱一号館美術館の正面に停車。
その他、詳細は公式サイトをご確認ください。


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