拡大するシュルレアリスム展の概要をお伝えしたvol.1に続き、vol.2の今回は、観覧して特に印象に残った作品をご紹介します。
会期も残りわずかとなっていますが、シュルレアリスムをどっぷりと楽しめる世界が広がっています。
オブジェを事象と捉え「超現実」見せる

入り口で顔を上げると正面に見える雪かきシャベル。どの角度から見ても特段手が加えられたような跡は見られず、拡大するシュルレアリスム展へと「どういうこと?」から導入してくれます。
既成のプロダクトを選び、それにほとんど手を加えずに意味を持たせたオブジェは、マルセル・デュシャンの作品。パッと見た印象では、製品の使い道が見えるだけ。しかしその本来の役割は奪われています。
デュシャンは、製品の選択にさえ美学的な判断を持ち込まない姿勢を貫き、この手法を「レディメイド」と名付けました。
ぜひタイトルとキャプションもチェックしてみてくださいね。

水彩で描かれたアゲハチョウと、アゲハチョウの標本が配置されている、フランシス・ピカビアの「黄あげは」。絵と実物を同じ空間に配されていることで、だまし絵のような印象を受けます。
水彩のアゲハチョウの向こうに描かれる人々や建物などは、アゲハチョウの見た世界かのようにも感じられます。
技巧が光と影を操る

タイトルを見るまで、全く別のものに見えていたのが、ヴォルスの「美しい肉片」。肉片と言われると、脂や筋なども含めて生々しく見えてくるのがまた不思議。
肉片が置かれた石か岩かとの視覚的な質感の近さも、カラーであれば意識が向かない部分。ものの名前や意味をいったん外したときに見えてくる質感や存在感そのものに目が向きます。
シュルレアリスム期を代表する作家の作品が一堂に

シュルレアリスム時代の代表的な作家であるルネ・マグリットの「王様の美術館」の山高帽の男が出迎えてくれる絵画パート。ダリやエルンスト、ミロなど、同時代の代表的な作家の作品がずらりと並びます。
個人的に好きな作品や、ここで見られるとは! という作品もあり、シュルレアリスムの入り口が絵画だったため、めちゃめちゃテンションが上がります。
が、ここで注目したいのは展示の方法。

山高帽の男の背面に展示されているのは、同じくマグリットの「レディ・メイドの花束」。壁を挟んで山高帽の男の正面と背面を展示することで、まるでそこに山高帽の男が立体で存在しているかのように感じさせます。
展示方法に工夫を凝らすことで、引力の強い作品がさらに魅力的になり、鑑賞者の想像力を掻き立てる。展覧会に足を運ぶ大きな価値を提示しているように感じました。
質感を越える表現

ドレスや装飾品なども多く制作されたファッション関連作品。魅力的な作品が多くある中で、心惹かれたのが香水瓶です。
蝋燭型の香水ビンは、エルザ・スキャパレッリ作の「スリーピング」(1938年)。燭台部分はドレスを模しているのでしょうか。肩口からウエストへのくびれ、スカートの広がりや揺れのように、美しい曲線で表現されています。

ウエストから広がるヒップラインの丸みと、なだらかに細くなっていく脚線が美しい香水瓶「ズュット」(1949年)。こちらもエルザ・スキャパレッリ作。足元に折り重なって溜まる布にやわらかな重量を感じます。
蝋燭もお洋服も個人的に好きなモチーフではあるものの、不思議なほどに惹き込まれます。硬質なガラスで、やわらかな曲線、やわらかなものを表現している点がとても魅力的でした。
空間ごとデザインする

ひとつずつの存在感が強いインテリア。展示室ではそれぞれに堂々と並んでいるように感じられます。
メレット・オッペンハイムの「鳥の足のテーブル」は、脚が鳥の足なだけでなく、天板にも鳥の足跡が。
脚のラインに強いこだわりが見えるこのテーブル。鳥の足としてはとても写実的でありながら、それがテーブルの機能として搭載されている点に強い魅力を感じます。

展示室でとてつもない存在感を放つ赤いリップを模した「ソファ『ボッカ』」。ダリの「リップソファ」へのオマージュとして、スタジオ65が制作したものです。
一般的にインテリアというと、日常の生活に馴染む色合いで作られますが、色や造形、モチーフなどさまざまな角度から現実に「超現実」が切り込んでくるような印象を受けました。
会期は6月24日まで。シュルレアリスムに身を浸して。

5月中旬に展示替えが行われた『拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ』。会期前半とはまた違った表情が見られそうです。
雨の日も増えてくる季節。駅からほぼ直結の会場で、ゆったりどっぷり快適に、シュルレアリスムの世界に身を浸してみてはいかがでしょうか。
見慣れた世界が少し違って見えるきっかけになるかもしれません。
『拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ』
⚫︎会期
2026年4月16日(木)〜6月24日(水)
[前期]2026年4月16日(木)〜5月17日(日)
[後期]2026年5月19日(火)〜 6月24日(水)
※会期中一部作品に展示替えあり
⚫︎会場
東京オペラシティ アートギャラリー(ギャラリー1、2)
アクセス /フロアマップ
⚫︎開館時間
11:00〜19:00(入場は18:30まで)
⚫︎休館日
月曜日(ただし5月4日は開館)
5月7日(木)
⚫︎入場料
一般 1,800円
大・高生 1,100円
中学生以下無料
・チケットは、アートギャラリー受付での購入の他、オンラインチケットも利用可。
オンラインチケット https://www.e-tix.jp/tocag/
・同時開催「幻想の景色と不思議ないきものたち|収蔵品展086 寺田コレクションより」、「project N 102 大上巧真」の入場料を含む。
・障害者手帳、指定難病受給者証等をお持ちの方および付添1名は無料。
・割引の併用および入場料の払い戻しはできません。
・Arts友の会会員は無料。(会員証をご提示ください)
・事前予約不要。
・15名以上でのご来館の際は要事前連絡(連絡先:03-5353-0756)
『拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ』公式サイト


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