2025年2月15日から、三菱一号館美術館にて開催中の『異端の奇才――ビアズリー』展。再開館した三菱一号館美術館での開催ということもあり、開催が発表されてからずっと楽しみにしていました。
うきうきで楽しんできたビアズリー展。撮影可能エリアの作品の画像を添えてご紹介します。まずは、ビアズリーがどのようにして「異端の奇才」と言われるに至ったか、から。
短命の奇才が見せた反抗精神

すごく感覚的な話、かつ、筆者のごく個人的な感想ではありますが、黒や余白に滲む反骨精神のようなものを強く感じました。そんなつもりないのかもしれないけれど、どことなく。
ビアズリーの表現方法が音楽でも、きっと好きになったような気がします。
家計困窮のため働きながら絵は独学
ビアズリーの来歴を見て驚いたのが、25歳で他界していたということ。幼い頃に肺結核を患い、その進行と闘いながら学び働き、絵を描き続けていました。
幼少期から絵を描き始め、25年半の人生で残した作品は1000点あまり。しかも、画家として表舞台に立ったのは、わずか5年というのだから驚きです。
家計が困窮しており、美術学校に通えなかったビアズリー。昼間は家計を支えるために16歳から事務員として働いていたため、制作活動にあてられるのは夜。ろうそくの灯りで描いていたといいます。
人との出会いで動き始めた画家人生の歯車
1891年夏に、E. バーン=ジョーンズから助言を受け、人生初の画家修業経験。ここから画家人生が本格的に動き始めます。
翌年には、書店主F. エヴァンズのもとでビアズリーの素描を見た、出版業者J. M. デントが、T.マロリー著『アーサー王の死』(1893〜94年)の挿絵一式を依頼。さらに、 O.ワイルド著『サロメ』(1894年)の挿絵一式も制作。画業に専念します。
しかし、画業に専念してからも、夜間に制作していた頃のスタイルは変わらなかったそう。昼間も分厚いカーテンを引いて暗くした部屋に、ろうそくを灯して制作していたといいます。
実現した理想を不意に失うも、新たな境地を見せる
成功のきっかけともなった『サロメ』の著者であるO.ワイルドが同性愛の科で逮捕されると、そのワイルド裁判の余波で、1895年に『イエロー・ブック』美術編集の職を失います。
構想段階から関わり、自身の理想を反映したともいえる雑誌から切り離されるというのは、さぞ悔しかったことだろうと推察します。
ビアズリーとワイルドの交流があった期間は1年にも満たないそうなのに。しかも『イエロー・ブック』だって、ワイルドが関わらないことを条件にしていたのに。時代もあるでしょうが、世論って怖いですね。
しかしその後も、挿絵などの仕事の発注はされており、季刊誌『サヴォイ』(1896)や、A.ポープ著『髪盗み』(1896)の挿絵で新境地を見せました。
展示室のパネルや壁にも注目

余談ではありますが、三菱一号館美術館の展示室のこういう演出、とても好きなんですよね。
2023年1月に鑑賞したヴァロットン展にもこのような柱や壁があり、まるでテーマパークにいるようでワクワクしたのを思い出しました。
会期は2025年5月11日まで。KITTEを抜けて東京駅から徒歩5分

2025年2月15日から、三菱一号館美術館にて開催中の『異端の奇才――ビアズリー』展。東京駅から徒歩5分ほどと、アクセスがいいのも嬉しいところです。
KITTEを抜けるルートがあることを知り、地図を見ながら通ってみたのですが、これは楽チン! 地図アプリにもちゃんと通り抜けの道順が表示されるので、迷子にならずにたどり着けました。
展示室内は撮影できるエリアが限られているので、筆者がお邪魔した日は、ボトルネックもなく穏やかに鑑賞できた印象です。ビアズリーの世界にどっぷり浸れました。
次回は、ビアズリーが手がけた仕事を、人間模様を含めてご紹介します。
『異端の奇才――ビアズリー』 公式サイト
⚫︎会場
三菱一号館美術館
東京都千代田区丸の内2-6-2
⚫︎会期
2025年2月15日〜5月11日
⚫︎開館時間
10:00-18:00
※祝日を除く金曜日と会期最終週平日、第2水曜日は20時まで
※入館は閉館の30分前まで
月曜休館 ※ただし4月28日、5月5日は開館
⚫︎観覧料
一般 2,300円
大学生 1,300円
高校生 1,000円
毎月第2水曜日「マジックアワーチケット」 1,600円
※当日の17時以降に同館チケット窓口でのみ販売します。
※価格はすべて税込
※障害者手帳をお持ちの方は半額、付添の方1名まで無料
※お得なチケットについて詳しくはチケット情報をご覧ください
⚫︎アクセス
JR「東京」駅(丸の内南口)徒歩5分
JR「有楽町」駅(国際フォーラム口)徒歩6分
東京メトロ千代田線「二重橋前(丸の内)」駅1番出口徒歩3分
都営三田線「日比谷」駅B7出口徒歩3分
⚫︎巡回先
2025年5月24日~8月31日 久留米市美術館
2025年11月1日~26年1月18日 高知県立美術館
三菱一号館美術館公式サイト
おまけ:近代建築感のある雰囲気

窓、ランプ、子柱の装飾。シンプルだけど、洋館を思わせるようで好き。

ここいつも素通りしてしまっていたのを後悔しました。階段下、ちょっと天井が低くて落ち着きますね。窓もドアも美しい。