vol.1では、2025年11月28日開幕の『視てはいけない絵画展』が、どんな企画展なのかをご紹介しました。
ここからは、実際に展示されている作品の中から、特に気になるエピソードを持ったものをピックアップ。作品画像を交えてご紹介します。
「子」という存在に触れるの大人の欲

日本には、童謡「とおりゃんせ」からも読み取れるように「七つ前は神のうち」という言葉があります。世界でも、未熟で現との境界が曖昧な魂であるとされる子どもが、大人の信仰や欲の対象として扱われた事例も確認されているそう。
ここに描かれている少年たちは、全員が7歳以下。そして享年も7歳以下。淑女と指揮者の男性は、老齢まで生きたとされています。何があったと考えられるでしょう……。

こちらは、画家のエレナ・ドレイパーが、5歳で命を落とした愛息イアンの大人になった姿を描いたもの。愛しい息子への愛着から、成長した姿を見たいと願い描いたのでしょう。
しかし成長したイアンの姿は、実在の人物に重ねて描かれています。
ぜひ実物を見に行って、その人物の没年に注目してみてください。愛しさから描いたはずの息子の姿に乗った“何か”が、影響を及ぼしたのではないかと考えてしまいます。
どの視点から視る“彼”か

穏やかに微笑む男性は、イギリスの画商マーカス・ブラウン氏。ロンドン美術界の有力者だった母親の遺作を私利私欲のために利用し、画壇を牛耳っていたと言われています。
こちらは禁視絵ではないとのこと。そんなことする人なの? というほど穏やかで好人物に見えますね。
もしかすると作者である立西絵麻は、ブラウン氏の都合の良い画家であれば画壇で優遇されることをわかっていた? のかもしれませんね。

こちらもブラウン氏を描いた肖像画ですが、立西絵麻の作品とは真逆と言っていいくらい、憎しみや恨みがこもった印象です。
悪意を持って描かれたと言われるこの作品。それをさらに数十人、数百人とも言われる画家たちが塗り重ねることでその念が増幅し、呪いのような現象を引き起こすとも言われています。
掲出されているキャプションに納得するしかない雰囲気を纏った作品です。
直視してはならない欲望

こちらは描かれている人物の生前の欲があまりにも強く、目を見た鑑賞者を糧にしてしまうと言われている作品です。
あまりにも写実的なため、直視するとその影響を受けてしまうのだとか。

というわけで、鏡を差し込み、そこに映った作品を楽しむという、覗き見スタイルでの鑑賞となります。
全容を見るにはどの角度が? なんて試行錯誤を始める自分に欲の深さを感じ、この程度でも作品の影響を受けることになるのか、と恐ろしい思いがしました。
好奇心は誰のものだったか
同展最後の展示作品となるのは、画家小野武久によって日本で制作された「好奇心」(2022年)。こちらは撮影禁止のため、ぜひ足を運んで視てみてください。
好奇心に誘われ会場に入り、順路に沿ってさまざまな思いや念の乗ってしまった作品を、感情や感覚で触れながら進んでいった先の「好奇心」。
それまでは自身が鑑賞者であったはずなのに、急転、実はずっと絵画に鑑賞される側だったのではないかという思いに。
人の心を脅かし吸い込むような、引力の強い作品だと感じます。心を吸い寄せられた先に、命の淵があるのかもしれないとさえ感じました。
東急プラザ銀座6階イベントスペースにて。会期は2026年1月19日まで。

広く抜けたスペースに展示される作品がゆったりと楽しめる「視てはいけない絵画展」は、東急プラザ銀座6階特設会場にて開催中。会期は2026年1月19日まで。
モキュメンタリーホラーという性質上、全てが真実とは限りませんが、広い視点からかなり楽しめる内容だと感じました。
明るい時間に日常とのコントラストを楽しむもよし。暗くなってから現実との境界の曖昧さを楽しむもよし。
「視てはいけない絵画展」が視せるさまざまな作品により、自身の中にある念や思いに触れてみてください。
「視てはいけない絵画展」
⚫︎会期
2025年11月28日(金)〜2026年1月19日(月)
※好評につき会期延長!
⚫︎会場
東急プラザ銀座
〒104-0061 東京都中央区銀座5-2-1 6階特設会場
⚫︎アクセス
・東京メトロ
銀座線・丸ノ内線・日比谷線「銀座駅」C2・C3出口徒歩1分
日比谷線・千代田線「日比谷駅」A1出口徒歩2分
・都営地下鉄
三田線「日比谷駅」A1出口徒歩2分
・JR
山手線・京浜東北線「有楽町駅」銀座口徒歩4分
⚫︎時間
11:10〜20:30(最終入場19:30)
⚫︎入場料
平日 ¥2,000(税込)
土日祝 ¥ 2,300 (税込)
「視てはいけない絵画展」
「視てはいけない絵画展」公式サイト


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