築100年の元薬局に、2026年1月末オープンしたベーカリー「炉炉(ロロ)」。
川越の住宅地で静かに時を重ねてきた建物に新たな灯りがともり、ここで日常に寄り添うパンと出会えます。
地域社会の中で「人と人」を繋ぐ場に

私の仕事はこの「炉」のように、人々にとって、糧を生み出す機能であったり、 コミュニケーションの中心であったり、なんとなくほっこりする存在であったり、 そのようなものでありたいと思う。
出典:炉炉 コーポレートサイト
「大きな有名店になろうとしているわけではなく、地域の大切な日々の中にあるパン屋に」とおっしゃるご主人。炉炉の存在意義に対するこだわりや信念に加えて、軽やかで温かなお人柄が感じられます。
筆者がお話をさせていただく間にも、顔馴染みのお客様や施工に関わった方々が代わる代わる来店されます。どなたとも軽やかにコミュニケーションを取られていて、人と人を繋ぐ温かい場を作りたいという思いを垣間見ることができました。
築100年の元薬局がパン屋として再び灯りをともす

炉炉が営業するのは、大正時代に建てられた築100年の歴史をもつ建物。川越の市街地から少し離れた、薬局だった場所です。
外観は、関東大震災後に流行した“看板建築”のような様式。外壁は大正時代に流行したドイツ壁だったりと、建物の味わい深さはもちろん、日本の近代史へと思いを巡らせるきっかけにもなります。
薬局の名残を色濃く感じる販売スペース

川越市の景観重要建造物に指定されている建物の「保全と利活用」を命題にお預かりしているそうで、内装もかなり原型を残しています。
薬局の造作がそのまま残る窓口はアール・デコの様式でしょうか。モダンな誂えで、創業者の方のセンスも感じられる内観です。

調剤室の窓口がそのまま厨房と店内を繋いでおり、お店に入ると顔を見て迎えてくださいます。また、薬箪笥が袋詰め用のカウンターとして利用されており、よい道具は丁寧に使い継いでいく日本の古き良き精神も感じられます。

また、薬局だった当時の造作物や道具なども、多くそのまま残しておられます。薬局で使われていた道具たちも役割を変え、新たに時を重ねていくのですね。
和室の粋が生きるイートインスペース

階段を上がって右手の部屋は、囲炉裏をイメージしてロの字に組まれたカウンター席。立派な床柱や欄間のある元和室をモダンにアレンジしつつも、元の造作にしっくりと馴染む空間が広がっています。

左の部屋はテーブル席。ちゃぶ台くらいの高さのテーブルと畳敷のベンチに、縦長の窓から日が入り明るい印象。こちらは茶の間のようなイメージで、天井高の割に圧迫感のない広々とした空間です。

押し入れを利用したディスプレイに飾られていた狛犬は、ご主人が張子で修復されたのだそう。この物件と同じ日に出会ったとのことで、地域に流れる時間や思い出を、引き継いでいくための巡り合わせだったのかもしれませんね。
毎日に寄り添う優しい味わい

「炉炉のパンは茶色いばかり」とご主人はおっしゃるけれど、個人的には日常を支えてくれる穏やかな優しさがあるように感じます。
「フランクブレッツェル」は、生地のシンプルな味わいと香ばしい香りが印象的。ブレッツェル好きには嬉しいおいしさ。フランクのジューシーな旨みとマスタードの酸味とのバランスもよく、あっという間にペロリです。

近所なら毎日食べたい! という優しい味わいの「全粒粉80ブレッド(炉炉しょく)」。手触りはふわっふわで、ナイフを入れるのもちょっと緊張するほど。外側は歯切れよく、中はしっとりむっちり。全粒粉がふんわり香ばしく香ります。空気がおいしい。
個人的には、厚めにスライスしてそのままか、トースターでほんのり温めるくらいが好みでした。おいしいバターとか、シンプルにお塩とオイルで焼いたお野菜なんかがあったらご馳走だなと感じました。
このほかに、「あんバターブレッツェル」と「全粒粉くるみとチーズ」もいただきましたが、どちらもおやつや食事にあったら、毎日が嬉しくなるような味わいです。
焼き上がり時間は店頭にお知らせあり

ご主人がおひとりで営業されているため、商品の焼き上がりは順次。平日と土曜日それぞれに焼き上がり時間の目安が店頭に掲出され、毎日同じ流れで提供されます。
全ての商品が同時に並ぶのは難しそうですが、ほしい商品によって行く時間を変えるもよし。焼き上がるタイミングが近そうなら、2階でお茶をしながら待つもよし。
八百屋さん、お豆腐屋さん、パン屋さん、と買いまわるような、日々の生活に根ざしたスタイルを楽しみたいと感じます。
東武東上線川越市駅から徒歩5分。ぬくもりを感じる佇まい。

炉炉は、東武東上線川越市駅から徒歩約5分。駅から大通り沿いに道なりに進むと、右手に見えてきます。
観光地として賑わう小江戸川越の中にも、こうして日常に寄り添う場所が息づいています。「炉炉」は、パンを買うだけでなく、人や時間とゆるやかに出会える場所。ほんの少し足を伸ばして、その空気を感じてみてはいかがでしょうか。
『炉炉』
⚫︎住所
埼玉県川越市六軒町1-10-2
・東武東上線 川越市駅 徒歩約5分
・西武新宿線 本川越駅 徒歩約10分
⚫︎営業時間
火〜金曜:10:00〜19:00
土曜:8:30〜18:00
⚫︎定休日
月曜、日曜
炉炉公式Instagram
炉炉コーポレートサイト


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