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【650円〜】日本人が描き出す超現実主義絵画展「シュルレアリスムと日本」で、暗澹と静謐の共存を見る。

アンドレ・ブルトンが『シュルレアリスム宣言』を発表したのが、1924年。フランスでの誕生から100年の時を経て、シュルレアリスムという芸術運動は、世界各国の芸術に多大な影響を及ぼしてきました。

もちろん日本も影響を受けた国のひとつ。

1920年代後半から始まる、東郷青児や古賀春江による先駆的試みや、ダリなどの影響を受けた若い画家たちが表現の幅を広げた1930年代。さらに、戦中戦後の混迷の時代と向き合いながら、その影響を絶やすことなく特有のシュルレアリスム作品を生み出してきた日本。

その作品、約120点が楽しめる、板橋区立美術館にて開催中の「シュルレアリスムと日本」をご紹介します。

重く暗い静けさの中にあるどこか整った世界

シュルレアリスムといえば、サルヴァドール・ダリのイメージが強いでしょうか。他にも、ジョルジュ・デ・キリコやマックス・エルンストなどが描いた『超現実主義者の脳内へようこそ!』というような作品が多く見受けられます。

そこには、当時の社会にあったのであろうどことない重さや暗さが感じられますが、合わさるエッセンスは「狂気」「作家の見る夢」「恐怖感」「掴みどころのなさ」などが多いように感じます。

比して、日本人画家の描くシュルレアリスム作品には、不思議な静謐さが感じられました。重たさ、暗さ、冷たさなどと共に、どこか穏やかな静けさがあり、とても日本人的。狂気も夢想も恐怖感も、シンとした静寂の中におさまりよく在る印象を受けました。

日本人作品独特の、作家の圧倒的存在感

さらに不思議で面白かったのが、作家の存在感の強さ。脳内を描いた本を見せられているような雰囲気を感じさせる作品が多かったことです。それも、作家自身が目の前にいて、指差して見せてくれているような「見てくれ!」と言わんばかりの、気圧されるような感覚がありました。

先述のとおり海外の作品において強く感じたのは、作家の脳内に“招き入れられている”雰囲気。ダリやクレーの作品に顕著に感じられるこれも不思議ではあるものの、なんとなく、でもシュルレアリスムってそういうものだよな、という感覚もあり、自然に受け入れていました。実際どうなのかは分かりませんが、こんなところにも国民性のようなものが映し出されるのかと思うと興味深いものがあります。

日本のシュルレアリスム発展の時代を映すフォントが天才的な図録は買い

このたまらんフォント……!!2970円(税込)でこれは大変にいいですね!

予算と手荷物に余裕があればぜひ入手してほしいのが、公式図録。展示されている作品が収録されているのはもちろんのこと、読み物としても大変興味深い構成となっています。2970円(税込)でこんなに充実していていいの?! と思うほど。

この図録の個人的な最大の推しポイントは、図録のタイトルや本文に使われているフォント。あまりにも明確に「シュルレアリスムと日本」を表していて、これは天才の所業。

日本でシュルレアリスムが流れ込み、影響が強まったのが1920年代後半から1930年代。当時の活版印刷を思わせるような、じんわりと味わい深いフォントが使われているのが、個人的にアツいのですよ。

展示室内は写真撮影禁止のため、しっかり目に焼き付けるしかないお気に入りの作品や、掲出されている時代背景などを紹介する文章。それらも丸ごと持ち帰れるので、ちょっと重くても、絶対に買いです。

過去の図録が割引価格で買える

今回の企画展ではグッズの販売はないものの、過去の展覧会の図録や、関連書籍の購入ができます。中でも過去の図録は半額まで値下げされているものもあり、今回の展示と関連がありそうな図録も割引対象となっていました。

興味を惹かれたので、関連作家の掲載されているものを購入。関連性を探して図録を行ったり来たりするというのもまた贅沢な楽しみだなと感じています。

東京展の会期は4月14日まで。会場の板橋区立美術館へは最寄駅からバスかタクシーで

遠路、ほんとによ……遠かった……

全国を巡回する「シュルレアリスムと日本」。現在開催中の東京展の後は、三重県立美術館への巡回が決まっています。

東京展の会期は4月14日まで。会場の板橋区立美術館の入館料は、なんと650円! この内容でこの金額は破格!! 

チケットは、2階の受付カウンターで購入できます。チケットも図録等も現金のみの取り扱いなので、少し多めにお財布に入れていくのが吉。

訪れるにあたり少しネックなのが、最寄駅からの距離。どの駅からも徒歩で20分前後かかるため、バスかタクシーの利用をおすすめします。

とはいえ、この内容で650円はほんとうに破格! なんとなく面白そうかも、とか、ちょっと見てみたいかも、と感じた方は、逃さずに見ていただけたらなぁと思います。

超現実主義の不思議な世界を覗く春。ちょっとした異世界の空気を感じに足を運んでみてはいかがでしょうか。

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蓮水おり(ori hasumi)

美味しいものと美術展とライブをテンション高めに楽しむワーママでバンギャ。コーヒー歴15年超の、J.C.Q.A.認定コーヒーインストラクター2級。12星座をモチーフにしたオリジナルブレンドのコーヒー屋を営んでいます。

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