東京・日本橋にある老舗書店『丸善』のカフェで、ハヤシライスの元祖と呼ばれる『早矢仕ライス』を味わってきました。
書店の奥で出会う、上品でどこか懐かしい味。静かな空間で本を片手に、明治から続く歴史の一皿に舌鼓。そんな特別なランチ体験をご紹介します。
元祖と呼ばれる早矢仕ライスの由来
ハヤシライスとは肉と野菜をデミグラスソースで煮込んだ料理。その名の由来は「ハッシュドビーフ・ウィズ・ライス」が訛ってハヤシライスになったという説や、上野精養軒の「林さん」という料理人が賄いで作っていたという説。また、発祥の地についても諸説あり、「元祖」を名乗る店は複数存在しています。
その中のひとつが、1869年創業と歴史ある老舗書店の『丸善』です。
創業者である早矢仕 有的(はやし ゆうてき)氏がふるまっていた料理が後に「ハヤシライス」と称され、レストランメニューとして定着したという説があります。
創業者の名が早矢仕なので「早矢仕ライス」と書くのですね。
昭和29年、丸善日本橋店に日本初の屋上ゴルフ練習場が開設。そのクラブハウスとしてレストランがオープンし、ハヤシライスもメニューになりました。そこで、隠れた逸品として、改築のため閉店するまでのおよそ半世紀に渡り愛されていました。
現在は丸善日本橋店の3Fにある『MARUZEN Café』などで食べることができます。
ランチセットのポーク早矢仕ライス
重厚な書籍コーナーを抜けた先にあるカフェ。
平日の13時過ぎに伺ったため、店内は落ち着いた雰囲気でした。
ランチ時間を少し外して訪れているサラリーマンの方々や、本を片手に紅茶を楽しむマダムたち――。
日本橋という土地柄と、老舗ならではの空気感に、思わず背筋が伸びてしまいます。

今回はランチメニューから『ポーク早矢仕ライス』をいただくことにしました。ランチだとサラダとドリンクがセットで付いています。
暑い日でしたので、アイスコーヒーを食前にいただきました。

深煎りらしいしっかりとした苦味とコク。
とても美味しく、サラダも洋食屋さんらしい王道のドレッシングで、メインへの期待が高まります。
上品な甘さとコクが絶品!

見るからに上品。濃厚な色合いのソースは、運ばれてきた瞬間から香り立ちます。
ひと口いただくと、ふんわりとした甘さとコクが口いっぱいに広がって……これは絶品!
こってりしすぎず、でも満足感はしっかりある。お肉や野菜の旨みがギュッと詰まっていて、ほんのりとした酸味と甘さのバランスが絶妙です。

「お上品」という言葉がまさにぴったりの一皿。けれど決して物足りなくはなく、食べ応えも十分。
「こんなに美味しいものが、明治や昭和の時代にも食べられていたなんて……」と、思わず昔に思いを馳せてしまいました。
伺った時間は混雑もなく、食後はコーヒーを片手に持参した本を少し読む時間も楽しめました。まるでマダム気分。東京のど真ん中で、こんなに優雅なランチができるとは!
今度は丸善で本を1冊買って、そのままカフェに向かっても楽しそうです。
『MARUZEN Café』
所在地:〒103-8245 東京都中央区日本橋2-3-10
アクセス:東京メトロ銀座線 日本橋駅 徒歩1分 B3出口直結
東京メトロ東西線 日本橋駅 徒歩2分 B3出口直結
都営浅草線 日本橋駅 徒歩4分
JR東京駅八重洲北口 徒歩5分
営業時間 :9:30~20:30(ラストオーダーは19:30)
※平日の食事は10:30~