年間をとおして、さまざまな展覧会が催される美術館や博物館。大きな企画展の際は、オリジナルグッズのみならず、キャラクター/企業コラボなど、多岐にわたるグッズを展開する特設ミュージアムショップが設えられています。
その影には、それぞれ特色のあるショップを企画・運営している会社が存在しています。今回は、「この会社の企画はアツい!」と感じる縁の下の力持ち、3社をご紹介します。
「East(イースト)」のあふれるセンスと作家へのリスペクトが作り出す多種多様なグッズは、気づくとカゴいっぱいに
「East」の企画するミュージアムショップは、とにかくグッズのバリエーションが豊か。ショップのスペースも広く、定番のポストカードや図録はもちろん、食品、雑貨、アパレルなど、ラインナップも多くものすごい物量。特にTシャツのバリエーションが豊富で、お洋服屋さんで悩んでいるのかと錯覚するほど。柄やサイズ感を真剣に考え始めると、悠に1時間くらいは滞在してしまいます。
2007年からシュルレアリスムや日本画、キャラクターやファッションに関する展覧会とそのショップを企画運営してきた「East」。最近も話題の企画展で大規模なショップを運営しています。
事前に公開されたグッズ情報を見て1万円以上の購入を覚悟したのが、2022年春夏に開催された「特別展アリス ―へんてこりん、へんてこりんな世界―」。原画版、挿絵版、アニメ版、サイケデリック版など、各絵柄ごとに売り場が展開されており、Tシャツだけでも何種類あるかわからないほど。
他にも食器や文房具、バッグにクッションカバー、食品はもちろん、定番の図録やポストカード、クリアファイルなどもずらり。
信じられない量のカゴの中身に、一瞬戻ってきた理性がTシャツを1種諦めさせたことをいまだに悔いています。以降、「迷ったら買う。手放すより入手する方が 困難」と考えています。手放さないけれど。
独自の世界観を放つ画家、ヒグチユウコさんの大規模個展「ヒグチユウコ CIRCUS展」も「East」の企画によるもの。さまざまなキャラクターやデザインが並ぶショップは圧巻。
バッグやTシャツなどアパレル商品が多い印象ですが、マグカップやプレート、お茶など幅広いラインナップ。カプセルトイのコーナーもあり、大人も子どもも楽しめる構成でした。
ここで暮らせるのではないかと感じるほどの充実のラインナップだったのは、2023年の春に開催されたマティス展。グッズのテーマは「マティスを感じる暮らし」。
事前のグッズ情報と、実際の作品を見てからとで印象は変わるもので、特に切り紙絵作品はタイトルがわかると急激に解像度がアップ。「刀を飲む人」や「イカロス」などの切り紙絵デザインのTシャツやバッグは、鮮明に魅力を増したように感じました。
また、マティス作品は制作に際して厳しい条件もあったそう。それらをクリアしたグッズには、作品や作家へはもちろん、作品の権利を有する方々への敬意を大切にする「East」の敬意も反映されているように感じています。
「IDF(イデッフ)」が作る日常に持ち出せるエドワード・ゴーリーの世界
モノクロの絵で独特の死生観を描いた絵本の世界を、「子ども」「不思議な生き物」「舞台芸術」などのテーマに沿って構成した「エドワード・ゴーリーを巡る旅 展」は、ミュージアムショップも含め「IDF(イデッフ)」の企画によるもの。
選りすぐりの作品をデザインしたランチバッグ、エコバッグなど日常にさりげなく使える展開。「この絵を持ってくるか!」というTシャツは、欲しかったサイズが欠けており断念してしまいましたが、いまだに思い出すほどにゴーリーの世界を日常に切り出した逸品でした。
東京での会期はすでに終了していますが、2025年度まで全国を巡回予定とのこと。お近くで開催される際には、ぜひ足を運んでグッズを手に取ってみてください。
「アートボックス」がミュージアムショップの魅力に気づかせてくれた、2021年のゴッホ展
美術展で初めてアパレルを購入したのが、2021年に開催された「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」。アパレルグッズの情報を見てどうしても欲しくなり、パーカーを買うためにゴッホ展に行くという逆転現象を発生させました。
定番の図録や文具以外にも、刺繍キーホルダーや軍手などユニークなラインナップ。アーティストコラボのアパレルも豊富で、売り場はさながらセレクトショップのようでした。
実際に展覧会を見て、気になった作品を気軽に持ち帰れるのがミュージアムショップのいいところ。今回ご紹介した3社の企画ならお気に入りに出会えること請け合い。迷わず立ち寄ることをおすすめします。
特設ミュージアムショップのグッズは一期一会。合言葉は「迷ったら買え」です。