予算から趣味探し 501~1500円以内

【1000円】『黒の芸術 グーテンベルクとドイツ出版印刷文化』“魔術”と言われた“技術”vol.2〜じっくり楽しみたいイチオシの展示作品

さて、前回vol.1では『黒の芸術 グーテンベルクとドイツ出版印刷文化』の概要をご紹介しました。

ここからは、実際に同展を鑑賞して、強く印象に残った作品や、気づきのあった作品をご紹介していきます。

今や、趣味や特殊な印刷物の制作に使用されることの多い活版印刷技術が、日常に使われ、文化や思想に広がりをもたらしたものだったことが感じられました。

作品に見られる製版の際の凹凸

『42行聖書(旧約聖書零葉)』(1455年頃)/ヨハネス・グーテンベルク印行/印刷博物館蔵

展示されている作品の中には、紙に凹凸ができているものがあります。「なんだろうなー?」と不思議に思っていたのですが、活版印刷の仕組みを理解すると「そりゃそうだ」と気づきます。

活版印刷は、印刷したい部分が凸状に製版されていて、その版の上に紙をのせて圧力をかけて印刷する方法です。そう、圧力をかける=押し付けて印刷していたのだから、そりゃ物理的な凹凸ができるわけです。納得。

当時の印刷機は現代のプリンタの原型とも言える?

木製手引き印刷機/印刷博物館蔵

今やボタンひとつでスムーズに動き出すプリンタですが、手動で印刷していた時代は、なんとふたりがかりで印刷機を動かしていました。

画像は当時の手引き印刷機を想定して復元されたものですが、動力がついておらず、完全に人間の手仕事だったことが見て取れます。なんでも最初は手を動かしていたのだとわかってはいても、すごいですよね。

この印刷機のさらにすごいところは、現代のプリンタとそう遠くない仕組みであるということ。

たとえば家庭用のプリンタ。給紙トレイからローラーで紙が引き出され、紙がプリントヘッドを通過する過程で、PCから指示したデータにインクが反映=プリントされて出てきます。

有版から無版へといった変化はありますが、そもそもの印刷機のスタート地点からは、そう遠くないところにあると言えるのではないでしょうか。

え、すごくない? 初手で(とは限らないけれど)その機構が出力できているって。手引き印刷機を作った人、極限まで考えたのではないでしょうかね。すごいアイデアですよね。

文化や思想を伝える役割も担う

『黙示録』(1511年)/アルブレヒト・デューラー/印刷博物館蔵

宗教改革前夜の時代である1500年前後に制作された、アルブレヒト・デューラーの『黙示録』。聖書の挿絵は、テキストに従属する形で入れ込まれることが多かったのだそうですが、同作は図像が優先されています。

場面や構図などは既存の聖書から継承されていますが、ダイナミックかつ想像力豊かな表現で近代的な芸術作品の域に高められ、以降の黙示録的表現の規範となっています。

この細かい線や表情の書き込みなど、見れば見るほど新たな発見や気づきがあり、じっくり見つめたくなる作品です。

『マルティン・ルター ドイツ語著作全集(ヴィッテンベルク版)』(1556年〜1559年)/マルティン・ルター/印刷博物館蔵

マルティン・ルターの全集は、さまざま出版されていますが、同展で見られるヴィッテンベルク版は、全ての全集の先頭にあるもの。

ずらりと展示されている同作は圧巻。照明の加減もあり、実物は画像よりもかなり重厚な印象を受けました。表紙や小口など、紙の経年変化も含めて興味深いものでした。

ブラックレターも常用書体だったんだ!

『ケルン年代記』(1499年)/ヨハン・ケルホフ印行/印刷博物館蔵

掲出されていたキャプションの「ブラックレターが常用されていた」という主旨の記載にハッとしました。

近年のポスターデザインなどで目にする印象を強く持っている、印刷・文化・芸術のどれに関してもライト層の筆者。当然といえば当然ですが、デザイン用の書体ではないのか! という、新鮮な驚きがありました。日本語でいうと何にあたるのでしょうね。変体仮名とかでしょうか。

さらに、ドイツでできた文字だと思っていたら、どうも起こりは1150年頃のフランス北東部とフランドル地方だというのだから、重ねてびっくりです。

会期は2025年7月21日まで!黒の芸術に身を浸しに印刷博物館へ!

活版印刷技術の起こりから、現代にかけての印刷物のや書体の変化、発展などをたっぷりと楽しめる『黒の芸術 グーテンベルクとドイツ出版印刷文化』。印刷博物館での会期は7月21日まで。

同展の手前に常設展もあるので、時間が許せばそちらもじっくりと鑑賞してみてください。入館直後のプロローグから企画展示に至るまで、印刷に関する歴史や文化などを網羅的に知ることができ、とても興味深く感じました。

さて、最終回となるvol.3では、展示を堪能したらぜひ立ち寄りたいミュージアムショップと公式グッズをご紹介します。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

-予算から趣味探し, 501~1500円以内
-, , ,