本記事には、撮影不可の作品画像が含まれます。取材に際し、特別に許可を得て撮影しています。
企業や国際的イベントのブランディングに大きな影響を与えたデザインをご紹介した前回。vol.3となる今回は、1933年以降、ナチス政権によって発展が妨げられてしまってから、第二次世界大戦を経て、モダン回帰が起こり第二の黄金時代の始まりと言われた1950年以降の作品を、構成要素ごとにご紹介します。
ここからの展示を見てすごくいいなぁと思ったのが《こちらが何も知らなくても訴えかけてくるものがある》ということ。何も考えず、ただ受け取りに行く楽しみもあると感じました。
具体性はないのに伝わる不思議【幾何学的抽象】

画像中央の、展覧会「バウハウス 50年」のポスターは、バウハウス開校50年を記念した企画展のもの。
色合いがいかにもバウハウス! という感じで、バウハウスの印象と展覧会の内容を端的に表していると言えそうです。

画像右の作品、個人的にとても好みで。ストライプの直線と曲線と青。さらに窓枠の中の陰影。大好きです。すごく惹かれるものがあります。
これ陰影まで描いてるのすごいなぁ、と、掲出されているキャプションを読んだら、陰影描いてない……重ねて撮ってる……本物の影……すご。
これはね、画像では伝わらないので、実物を! ぜひ実物を見てください! すごいよ!

こちらは放送局の公開コンサートのポスター。これだけのパーツで、音を生む振動やその広がりなどが見えてくるようなデザイン。
パッと見は「なんだ?」という感じですが、周辺情報が見えてくると、なるほど音が見える! というイメージでした。
つい読みたくなる【タイポグラフィ】

タイポグラフィで構成されたポスターの文言をつい追って読んでしまう人、多いのではないかと思います。展示作品も、つい読みたくなってしまうものがたくさん。
画像右の、展覧会「ヨハネス・グーテンベルク 1400−1468 印刷術が世界を変える」のポスター。画像のように横からの角度だとはっきりと文字が見て取れますが、正面から見るとちょっと不思議な見え方なんですよね。これも実物を見てほしい作品です。

活字好きな人は、このセクションでだいぶ楽しめそう。さまざまな形の文字がこれでもかというほどたくさんあるし、サイズや強弱の意図を考えるのも楽しいですよね。
人間の自然な視線の動きを利用して、余白は残しつつ情報量は増やしているように感じました。
行政〜!?ユーモラスなデザインを採用する攻め

キスマークが印象的なこちらはなんと、ボン市の市章。
市章?! 行政ってこと? 攻め〜!!
日本ではちょっと考えられないくらいのしなやかな感性で、ボン市に俄然興味が湧くというものです。すごいなぁ、いいなぁ。
シュールでユーモラスでサイケ

こちらはラジオ番組「パノップティクム(西ドイツ放送)」の番組ポスター。文字の中にデザインされた口の周りが赤いものもあり、紅の汚しなのか、何かを喰みどうにかしたのか……みたいなことを考えてしまいます。
全体的な色合いは優しいのに、リップの鮮烈な赤が強く印象を残します。

こちらも若者向けのテレビ番組「リノツァラス(西ドイツ放送)」のポスター。ツノが電球、尻尾がプラグのメカニカルサイ。ポップ感あるフォント、落ち着いたトーンのはずなのに配色の妙でサイケなストライプ。
この感じ! すごい好き! メカニカルなのに動物としての曲線がちゃんとあるのもとてもいい! 好き!
タイポの妙!

こちらはすべて「a」で形成された街。密度やフォントの違い、モノクロの反転でビル群を表しています。すごい。教えていただくまで気づかなかった。これは寄ったり引いたりしていくらでも見てしまいます。
近づけば確かに「a」なのに、引くとすっかり街になるのが面白くて。こういうのがあるから面白いんですよねぇ。

こちらも人間の顔をタイポグラフィで覆ったもの。顔の凹凸を表現したのでしょうか。目と唇は見て取れるし、耳もある。
こちらは単語が並んでいるように見受けられ、つい読みにいってしまいます。
原材料表示なんかをすみずみまでつい読んでしまう人にも、とても魅力的です。そう、筆者のことです。
さて次回は、新館の展示をご紹介します。押し寄せてくるアートと情報は、まるでアートナイト。乞うご期待です。
『戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見』
⚫︎会期
2025年3月8日(土)〜5月18日(日)
⚫︎時間
10:00 〜 18:00 (入館は閉館の30分前まで)
⚫︎会場
東京都庭園美術館(本館+新館)
⚫︎休館日
毎週月曜日
⚫︎観覧料
オンラインによる事前予約制を導入しています。
◆観覧料一覧
一般 1,400円
大学生(専修・各種専門学校含む) 1,120円
中学生・高校生 700円
65歳以上 700円
※別途団体料金の設定あり。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。