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【2200円】10年ぶりの大回顧展。日常の奥に隠された非日常に吸い込まれる『デ・キリコ展』

「今年いちばん楽しみな美術展はどれ?」と問われたら、迷わず『デ・キリコ展』と大声で答えていました。

イタリアの画家、ジョルジュ・デ・キリコの大回顧展が、東京都美術館にて、約10年ぶりに開催されています。

シュルレアリストや前衛芸術家にも大きな影響を与えたデ・キリコ作品をたっぷりと堪能してきました。

100点以上の作品で、デ・キリコ芸術の全体像に迫る

出口のエスカレーター近くにあるフォトスポット『予言者』のパネル。メインビジュアルのこちらはもちろん実物の展示もあり。

デ・キリコの活動期間を網羅するように、100点以上の作品が大集結。絵画はもちろんのこと、彫刻や舞台衣装、挿絵の展示もあり、360度あらゆる角度から、デ・キリコ芸術を見つめようという大規模展覧会です。

自画像や形而上絵画、伝統絵画への回帰や、自作の再制作など、さまざまな作品をたっぷりと楽しめます。

また、作風の変化の背後にある、大きな時代の流れや、デ・キリコ自身や家族を取り巻く環境の変化などを感じ取ることもできます。

さまざまな自画像に見る反抗期メンタル

デ・キリコの自画像には、一般的に想像されるような、“そのときの自身”を描いた作品のほか、闘牛士の衣装や鎧を着たものなど、いわゆるリアルとは違ったものもあります。

当時、そのような空想的な作品はよく思われておらず、批判の対象でもあったそう。でも、だからといって、それを聞き入れるわけでなく、軽やかにスルーし、いくつもそのような作品を生み出しました。

なんで? 反抗期?? 

いいえ、別段そういうことではなく。デ・キリコには、自身をとてもよく理解してくれる家族があり、世の否定的な声に耳を傾けずとも、自分を信じて良いと思うものを作る心を持ち続けられる環境と支えがあったのです。

とはいえ、反抗期だって安心して感情を発露させられる環境があってこそ迎えるもの。デ・キリコの安定したバックグラウンドを垣間見れるのが、彼の自画像です。

これぞデ・キリコ!という不思議な世界の数々

デ・キリコの代名詞とも言える「形而上絵画」。初期の作品は世界中に散り散りになっており、こんなにたくさんの作品をいっぺんに見られるのは珍しいこと。

特に1910年代の作品は、ダリやマグリットなど、シュルレアリストに大きな影響を与えています。

会場内撮影禁止なので、こちらもフォトスポットのパネル。『薔薇色の塔のあるイタリア広場』

この頃の作品はまだ、伝統的な遠近法で構成されており、基本的に正面からの視点で描かれています。その中にほんの少し側面からの視点も感じさせ、この不均衡がちょっと心をざわつかせる感があります。このちょっとの違和感を解明したくなって、さまざまな角度からいくらでも眺めてしまいます。これは魅力なのか罠なのか、という気持ちになったりもします。

『不安を与えるミューズたち』

デ・キリコの絵画にマヌカン(マネキン)が登場したのは、第一次世界大戦の発生と、それに伴う最初の爆撃の時期とぴったり合致するそう。表情を持たないマヌカンは、絶望や感情の消失を表すモチーフなのかと思いきや、「ミューズ」であり「予言者」としての役目も持たされていました。

マヌカンの主題は、デ・キリコにとってとても実り豊かなものとなり、代表的な作品を多く生み出しています。

マヌカンが描かれた作品では、時代は少し離れますが、『オイディプスとスフィンクス』が特に印象的で、どことなく表情が想像できるような気持ちがしました。スフィンクスの表情も気に入っています。

古典回帰と過去作の再制作

デ・キリコは「形而上絵画」で名声を得たのちに「伝統絵画」に立ち返った時期があります。ゴッホ作品から切り出したモチーフが描かれたり、ルネッサンス様式の技法を使っていたり、ルノワールの裸婦像の影響を色濃く感じるような水浴画も残しています。

また、過去の自身の作品を切り離し組み替えて、新たな形而上絵画を生み出すこともしていました。実際に展示された作品を見ながら「見たことあるな……あ! この枠はあの絵で、そこにあっちの絵をバラしたのを組み入れたのか!」など、発見もあり、テンションも上がるというものです。

彫刻も衣装もある!

デ・キリコが彫刻において大切にしていたのは「やわらかさ」。美しく洗練された曲線で作り出された人々は、優美で穏やかでしなやか。

中でも「考古学者」の背中の美しさには目を見張るものがあります。随分と長い時間、うっとりと眺めてしまいました。

また、舞台衣装も手がけており、デザイン画や実際に舞台で使用された衣装も展示されています。

『デ・キリコ展』は東京都美術館で開催中 

左・『白鳥のいる神秘的な水浴』/中央下・『オデュッセウスの帰還』

デ・キリコ展は現在、東京都美術館で開催中です。会期は2024年8月29日まで。

もうすでに暑すぎる初夏から、梅雨を挟んで夏休みまで。暑い季節のレジャーにもおすすめです。

日常の奥に隠れた非日常にスルッと吸い込まれに行ってみてはいかがでしょうか。

おまけ

上野に行ったら、お決まりのビールです。風は強かったものの、昼間にお外で飲むビールは格別ですよね! ね!! うま!! 暑い時期はより美味しいんだろうなぁ。

また、公園口のNewDaysには、2024年3月から日本酒サーバーも新たに設置されており、80mlを300円で楽しめるようになっています。

半合弱だから、ちょっとだけ飲みたいとか、ちょっとずついろいろ飲みたいときにいいかも。今度試してみようかな。

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蓮水おり(ori hasumi)

美味しいものと美術展とライブをテンション高めに楽しむワーママでバンギャ。コーヒー歴15年超の、J.C.Q.A.認定コーヒーインストラクター2級。12星座をモチーフにしたオリジナルブレンドのコーヒー屋を営んでいます。

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