本記事には、精肉前の牛肉の画像が多く掲載されています。苦手な方はご注意ください。
WEBメディアのライターという立場を利用して工場見学を楽しませていただいたもので、一般公開はされていません。食いしん坊が仕事になったことでできた体験です。
初級編に続き、上級編ということで、ここからは精肉前の状態から保管するための冷凍技術までをご紹介します。
今回は、普段はなかなか見る機会のない状態のお肉にはしゃぎながら、A5、A3など、よく耳にするお肉の等級についてまでをお伝えします。
これが見たかった!ずらりと並ぶ枝肉に感じる命
ニイチクの工場では屠畜は行っておらず、枝肉の状態で仕入れ、解体・精肉をしています。小売店や飲食店で目にする状態のお肉も、当然ながら、この状態から精肉されていくわけです。
こうして骨がついているのがわかる状態を見ると、ドーンと骨付きの大きなステーキなども、そりゃあのサイズになるよね、と思えてきますよね。
某老舗すき焼き店用のお肉もここで熟成
こちらは、浅草の老舗すき焼き店用の熟成を進めている最中の枝肉。これまでの枝肉に比べ、少し身が締まって色が濃くなっているのがわかります。
温度、湿度、空気中の微生物などに、各熟成庫・工場ごとに固有の環境があるのだそう。それらを踏まえた上で「ニイチクからのみ仕入れる」というのは、さまざまな条件がきちんと管理されていることへの信頼の証と言えるでしょう。
「A5ランク=いちばん美味しい」はほんと?
牛肉にフィーチャーしたグルメ番組などでよく耳にする「A5ランク和牛」。さもいちばん美味しいお肉かのように言われますが、実は美味しさのランクではなく、品質のランクです。
「牛枝肉取引規格」という、農林水産省の承認を得て制定された規格に基づいて決められており、品質が高いことは確かです。しかし、美味しさは好みによるところが大きいと言えそうです。
大まかな判定基準は可食部と脂の量
「A5」と表記されることからも想像できるように、アルファベットと数字にそれぞれ意味があり、それを組み合わせたものを等級として表示しています。
アルファベットは「歩留(ぶどまり)等級」
お肉の取れる量をを表し、A・B・Cの3段階に区分されます。歩留とは、枝肉の原形に対する可食部の割合のこと。同じ重量の枝肉でも、食べられる部分が多い個体の方が等級が高くなります。
数字は「肉質等級」
おいしさの等級と言われ、1〜5までの5段階に区分され、数字が大きくなるほど質が高いとされています。お肉のキメが細かく締まっていてツヤがあり美しくサシが入ったものに“5”がつけられるわけです。
決まった肋骨の間を見てランクを判定
確認するのは、肋骨の6本目と7本目の間。そこをカットし、切り口を見て判定するのだそう。
こちらA5のお肉。ボリュームがあり、パンッとハリがあってサシがしっかり入っているのが見てとれますね。
こちらはお肉としての質も高いですが、脂の量も多いため、アラフォー筆者は「焼き肉なら2枚ぐらいあればいいかな〜」となりがち。
少しだけいいお肉が食べたいアラフォー、もしくは、奮発していいお肉食べるぜ! という内臓が元気な人のニーズに応えてくれます。
B2のお肉は身がやや薄くサシや脂の量が少ないことがわかりますね。A5と比較すると物足りないように感じますが、こちらが歩留も肉質も標準の等級。
ご担当者様曰く、A4、A3くらいが赤身とサシのバランスがよくて食べやすいとのこと。
等級について教えていただいて正しく理解したことで、用途や好みによってお肉を選べるようになりました。
骨格標本が好きなので、こんなに生に近く、きれいな状態が見られて感動です。肋骨の間の空洞を覗き込んで「ここに内臓が入っていたんだもんな。生きていたんだよなこの牛も」なんて思いながら、お話を伺っていました。
普段なにげなくいただいているものが命であることをより強く感じられ、一層大切にいただこうという気持ちになります。
枝肉の内側を見せていただきながら、これ左右閉じたら人間入っちゃうな……なんて余計なことも思ったりしました。だって小柄な人くらいなら入れて閉じられそうな大きさなんだもん。
枝肉が保管されている冷蔵庫は、まだまだ工場の入り口付近。ここまででとんでもなくはしゃいできましたが、見どころはまだたっぷり。
次回はこの枝肉たちが、塊肉になり保管されるまでをお伝えします。今回よりは画像も優しめになりますが、もしここまでご覧くださった苦手な方はもう少しご辛抱ください。