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【1700円】故郷ナンシーと憧れのパリ『没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ』〜作品に込めたガレの声

前回は、輝かしい成功を収め、パリの社交界へと交流を広げた頃の作品をご紹介しました。

ここからは、その交流がガレに与えた影響と、そこから生まれた苦悩を抱えた時期の作品をご紹介します。

どんなときも、芸術家にとって作品は“心を写す鏡”だったのかもしれません。

都市と故郷との狭間に苦しんだ、栄光の1900年パリ万博

フランス史上、もっとも華やかな国際舞台になったといわれている1900年パリ万博。この盛り上がりは首都の発展を大きく助けるものでした。

しかし、地方都市には何の利益ももたらさないと、開催を反対する声も。その中心に立った都市のひとつが、ガレの故郷であるナンシーです。

ナンシー市民であり、フランスを代表する装飾芸術家。ナンシーの文化を推進しつつ、パリ万博への出展もしたい。故郷と国際都市の狭間にあることでの精神的な重圧は如何ばかりだったのでしょうか。

作品に刻まれた声。「もの言うガラス」

聖杯「無花果」エミール・ガレ(1900年)/国立工芸館蔵

キリスト教の聖餐に用いられる杯である聖杯を模した花器「無花果」。ガレの持てる技術を詰めに詰めたような作品で、実にさまざまな技法が使われています。

本作には、ガラス素地の表面がまだ熱いうちに薄く形作っておいたモチーフを貼りつけて馴染ませる「マルケトリ」というガレが考案した技法が使われています。マルケトリは、モチーフを嵌め込んだような印象を与えるとのこと。

器部分がそうでしょうか。彫り描いたのとはまた違った印象がありますね。

そして、この美しい赤を見てよ……。画像もなかなか頑張りましたが、やはり本物には敵いません。実物を。実物をぜひ見てください。美しいから。

脚の基底近くに「人は皆同じ父親から生まれた息子なのだから。同じ眼からこぼれ落ちた涙なのだから。」というヴィクトル・ユゴーの詩が刻まれています。故郷とパリの板挟みにされた、ガレの心情だったのかもしれませんね。

(左奥)壺「枯葉」(1900年)/サントリー美術館(菊地コレクション)、(右手前)栓付瓶「葡萄」(1900年)/サントリー美術館蔵、いずれもエミール・ガレ

なんとも可愛らしい印象の栓付瓶「葡萄」。赤いガラスを被せた胴部には、葡萄の葉と蔓(つる)を彫り出しています。そこへさまざまな色のガラスで半球状のカボションを溶着。葡萄の粒を表しています。可愛い!

胴部も可愛いのに、把手も栓までも可愛い。色合いからくる落ち着きのある可愛さが、40代〜60代くらいのポップなおしゃれマダムみたいで素敵です。

この可愛らしさの中にも、シャルル・ボードレールの詩「毒」の第一節が刻まれています。

さまざまな技法の融合と美しい青

大杯「くらげ」エミール・ガレ(1898年−1900年)/サントリー美術館蔵(菊地コレクション)

大好き、青いガラス。いくらガラスの特性があるといえども、こんなに水面が煌めくような輝きを作れるものですか?! 海面に向かう途中、徐々に光が届き始めたかのような煌めきです。

こちらは内側から見た青。水面を上から見下ろしているような印象です。海の青、海藻のような緑。美しいですね。

ジョッキ「ホップ」エミール・ガレ(1894年)/サントリー美術館蔵(菊地コレクション)

どれだけ青い作品が好きなのかと筆者自身も思っております。でも好き。この青、無色透明ガラス素地に青と緑と褐色の被せガラスをしているのだそう! 金属で発色させているのかと思っていました。すごい手の掛け方。

でも本作で注目したいのは、青よりも金属製の把手。ホップを模っており、葉も蔦も実も、実物に何か加工したのでは? という繊細な作り。少し厚手のどっしりした器部分との対比も美しさを底上げしているように感じます。

家具部門へも参入。象嵌と曲線の美。

ティーテーブル「水仙」エミール・ガレ(1897年頃)/サントリー美術館蔵(菊地コレクション)

曲線が美しすぎやしませんか? 全体に曲線の美しさが際立っていて、なんとも優雅な印象です。

天板は、象嵌という技法を使って水仙が表されています。どことなく日本とかアジアの木製家具の雰囲気を感じるのは、東洋絵画のように余白を大きく取った構図だからかもしれません。

それにしたって、このぐっと反ってから折れる“くの字”のラインと、その先でしなやかに描かれる曲線……植物の形を取り込んでいるんですって。美しい。

会場のサントリー美術館は東京ミッドタウン内

2025年2月15日から開催中の『没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ』。会期は2025年4月13日まで。(作品保護のため、会期中展示替えを行います。)

会場であるサントリー美術館は、地下鉄大江戸線六本木駅8番出口直結。東京ミッドタウン ガレリアの3階にあります。方向音痴を極めるプロ迷子の筆者でも、迷わずにたどり着けました。公式サイトに道案内の画像もあります。安心。

次回はいよいよガレの最晩年期へ。ガレが生み出したさまざまな技巧をこれでもかと盛り込んだ作品をご紹介します。

『没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ』

⚫︎会場
 サントリー美術館
 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階

⚫︎開館時間
 10:00~18:00(金曜日は10:00~20:00)
 ※3月19日(水)、4月12日(土)は20時まで開館
 ※いずれも入館は閉館の30分前まで
 火曜休館(4月8日は18時まで開館)

⚫︎アクセス
 都営地下鉄大江戸線六本木駅 出口8より直結
 東京メトロ日比谷線六本木駅 地下通路にて直結
 東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より 徒歩約3分
 都営バス(渋谷発)都01「六本木駅前」下車 徒歩約2分
 ちぃばす(赤坂ルート)「六本木七丁目」、「檜町公園」下車 徒歩約1分
 詳しくはこちら

⚫︎関連イベント
 「エデュケーターによる鑑賞ガイド」
 開催日:隔週土曜日(3/22、4/5)
 開催時間:11:00~、14:00~(各回 約20分)
 定員:各回95名 当日先着順(満席になり次第受付終了)
 会場:サントリー美術館 6階ホール

サントリー美術館公式サイト

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