501~1500円以内 1501~3000円以内

【700円〜】頽廃する物質と、その向こうに感じる“人間”の存在。『変わる廃墟展2024』に見る日本の過去と未来。

一般的な廃墟のイメージといえば、汚くて危険な心霊スポットといったところでしょうか。

ネガティブな印象を抱かれがちな廃墟のイメージをガラッと変える写真展が、台東区・浅草橋のTODAYS GALLERY STUDIO. にて開催されています。

流れていく時の中、人間に作られ、人間に見捨てられた建造物たち。打ち捨てられ朽ちていくだけの廃墟からは、かつて確実にいた“人間”の存在を感じとることができます。それは心霊的なことではなく、そこにあった生活や娯楽の色や温度。

それを存分に感じさせてくれる写真の数々を『変わる廃墟展2024』で見つめてきました。

取り残された場所にも容赦なく時は流れる

椅子のある廃墟風景っていいですよね。かつての姿に想いを馳せがち。

高度経済成長期やバブル経済期には、必要火急/不要不急を問わず数々の開発がなされ、それに伴いさまざまな建造物が急激に増えてきました。

しかし、炭鉱・鉱山などは時代の流れや資源の枯渇などの理由で閉山。リゾートホテル、大規模な温泉旅館などは、バブル経済の崩壊をきっかけに、運営費・修繕費などが工面できなくなり閉館。またはオープンに至らず未使用のまま、解体費用も用立てられず打ち捨てられた施設も存在します。

隆盛から無人島へ。「軍艦島」が体現し続ける諸行無常。

日本に現存する廃墟の中でとりわけ有名なのは、長崎市の沖合に浮かぶ「端島(はしま)」でしょうか。通称「軍艦島」といえば、一度くらい耳にしたことがあるでしょう。

軍艦島は炭鉱施設として開発された島で、主に石炭を掘削・運搬する施設と炭鉱労働者の生活用施設で構成されています。日本で初めての鉄筋コンクリート建築の集合住宅が建築され、1960年代には東京以上の人口密度を有するほど、大きく生活が営まれていました。

しかし石炭産業が隆盛を極めたのは、明治〜昭和中期頃。1974年の閉山に伴い島民が離島。無人島となった現在も、さまざまな設備や建造物、神社にいたるまでがそこに残されたまま。

今日も潮風に吹かれながら、少しずつ朽ち、姿を変えています。

そこに確実に存在していた“人間”の温度を感じる

すべての廃墟に共通しているのが「たしかに人間が存在していた」ということ。

生活者、労働者、観光客。未使用の施設にはディベロッパーやデザイナーなど、建築に携わった人々の存在を、展示されている写真から存分に感じとるとこができます。

住宅に残された家具や家電、食器や本、電灯の傘などからは、そこに暮らした人々のあたたかみや色合いが。体育館で朽ちたピアノ、教室に残された机と椅子、階段の踊り場に掲示された絵や学年通信、渡り廊下などからは学校の賑わいが感じられます。

リゾートホテルの宴会場やバーラウンジなどは、いかにも60年代の流行を取り入れた設えで、ポップな色合いの中に日本的な雰囲気が感じられます。素面の整然と酩酊の混沌。そんな空気をはらんだまま、色褪せ朽ちていく過程が見て取れます。

くずおれたテラス。入ることも出ることもできなくなった部屋。途切れた階段。客人に見られることなく瓦解したタイル画。信仰を深めた聖堂。

“人間”が廃墟に残したのは物質だけでなく、色や温度、空気感も置いていったことが、写真の中に感じられます。

写真集やステッカーなど、クリエイターのオリジナルグッズも充実。

公式図録は1400円。ステッカーは400円。大きな写真集が2200円と、小さな図鑑は900円。(全て税込)ポストカードは入場特典です。

会場限定販売の公式図録はもちろんのこと、出展しているクリエイターの写真集やポストカード、ステッカーなどのグッズも充実しています。この規模の展覧会で、気に入ったクリエイターの作品を手元に置くことが叶うのは嬉しいところ。

今回は、公式図録とステッカー、お気に入りの作家さんの写真集2冊を購入。(画像のうち1冊は昨年購入したもの)

予算に余裕があるならば、公式図録はしのごの言わずに購入することをおすすめします。

展覧会のグッズの話をするたびに言いますが、展覧会を丸ごと持ち帰れるのが公式図録です。展示を見て気に入ったら、胸に抱くのは思い出と図録。

図録は思い出の輪郭を担保してくれます。

東京展のあとは名古屋へ巡回

ビルの5階のエントランスはこんなにポップ。

東京展は台東区・浅草橋の「TODAYS GALLERY STUDIO.」にて3月いっぱいまでの開催。4月6日から「TODAYS GALLERY STUDIO. NAGOYA」へ巡回します。

どちらも入場料は700円と、ほんとに? と思えるお値段。入場特典に、ポストカードを1枚いただけるのも嬉しいところです。700円だよ? いいの??

今回は国内の廃墟写真が多かったように見受けましたが、ボリュームはたっぷり。廃墟好きなら見慣れた風景も、時間の経過で少しずつ変化していることを感じられます。

また、初出展のクリエイターの作品もあり、毎年訪れている筆者でも新鮮に楽しむことができました。

『変わる廃墟展2024』は、さまざまなタイプの廃墟写真を一挙に見られる数少ない機会。廃墟好きさんはもちろん、ご興味を持っていただけた方は是非とも、廃墟の魅力に惹き込まれに、足を運んでみてください。

-501~1500円以内, 1501~3000円以内
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