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【2200円】『マティス 自由なフォルム』が見せる美しさの振り幅

自由で大胆なフォルムを自在に描き出すマティス。2024年のマティス展は、『マティス 自由なフォルム』のタイトルどおり“自由なフォルム”がテーマとなっており、今回はとりわけ切り紙絵に注目しています。

2023年に、ほんの気分転換のつもりで足を運んだマティス展。そこで魅力を知ってしまったため、これは外せない! ということで国立新美術館へ見に行ってきました。

切り紙絵の大胆な図案を壁一面の大迫力で楽しめる

マティスの切り紙絵の超大作「花と果実」は、この展覧会のためにフランスで修復された、日本初公開となる作品。

順路に沿って進んでいくと、鮮やかな色彩とシンプルな線で構成された図案が、ドーンと真正面に。この作品のためとも言えるほど贅沢に空間が使われているので、さまざまな角度から気の済むまで「花と果実」を堪能できます。その大きさはなんと、4.1メートル×8.7メートル! ピンとこないでしょう。見に行くといいですよ。圧巻ですから。

切り紙絵といえば、晩年のマティスが精力的に制作した作品。その作品は、美術文芸雑誌『ヴェルヴ』で何度も特集が組まれ、作品集『JAZZ』の発刊に至ります。

フォービズム、キュビスムの先に線の単純化、色彩の純化を追求した結果、切り紙絵に到達したマティスにとって、ハサミは最高の道具だったのかもしれません。

晩年、体調を崩し体力が落ちてしまったマティスは、ベッドの上でもできることをと、絶えず作品を生み出す情熱を持ち続けました。

また、本展のキービジュアルである「ブルー・ヌード Ⅳ」。色は青のみというシンプルな構成ながら、使われている青はなんと20を超えるとのこと。

なるほどそれは表情だって生まれるわけよ。脳内にアンミカ先生だってご登場なさる。

切り紙絵は祭服も大胆に飾る

上祭服も手がけていたマティス。

上祭服とは、カトリック教会や聖公会、一部のルーテル教会の司祭、司教、牧師が着用する、見てのとおりポンチョのような形をした祭服の一種です。

盛式な礼拝のときに用いられる祭服で、教会暦の時節に従い決められた典礼色のものを着用するのだそう。黒の上祭服は“悲しみ”を表すそうで、葬儀に着用することができますが、一般には白を使用する場合が多いとのこと。

大胆でありながら整った印象を受けるのが「黒色のカズラ(上祭服)のためのマケット」。正面も背面も小物に至るまで、モノクロ・直線と曲線の美と静寂を感じられます。

ヴァンスのロザリオ礼拝堂を体験できる夢空間がここに!!

青・黄・緑のステンドグラスから差し込む光は、白い壁や床に、その時間の色を映します。

海外にまるで興味のない筆者ですが、ロザリオ礼拝堂だけは気持ちが揺れるところ。

何にそんなに惹かれるかというと、移ろう光で表情を変える世界。

朝の礼拝堂、昼の礼拝堂、夕暮れの礼拝堂、夜の礼拝堂。それぞれにガラッと表情が変わり、またそのどれもが美しいこと。

お気に入りは、夕暮れ。射す光の色に伴い、だんだんと色も強さを増していきます。

その日の人々の思いを抱き締めながら暮れていく。そして次の朝、やわらかな光でまた人々を迎える。

マティスが最晩年に建設に取り組んだロザリオ礼拝堂。ヴァンスのドミニコ修道会とマティス家の許可を得て原寸大で再現されています。レプリカとはいえ、芸術家としての集大成とも言える作品の雰囲気を味わえたのは、とても素敵な経験でした。

もちろん油絵も彫刻もあり。展示作品は160点超。

切り紙絵に焦点が当てられていますが、その他の作品だってもちろん展示あり。初期の油彩画や彫刻などを含めて、160点超の作品が一堂に介しており、時代の流れと作品の変化が見て取れます。

フォービズム、キュビズム的表現は絵画にとどまらず、彫刻にも表れているのも興味深いところ。同じモデルで何パターンも製作された彫刻の徐々にシンプルになっていく構成に、マティスが削ぎ落としたものは何だったのだろうか……なんて思いを馳せてみるのも乙なものです。

音声ガイドは激推し!!

なぜならナビゲーターが安藤サクラさんだから!!! 好き!!

展示されている作品の情報を、音声で楽しめる音声ガイド。主要な作品について解説してくれる安藤サクラさんの声は、穏やかでときにポップさもあり、心地よさと軽やかさを持って、展示をより楽しませてくれます。

さらに、作品によっては主任研究員の方の解説も入っており、より踏み込んだ情報が聴けるのも嬉しいポイント。普段あまり音声ガイドを利用しない方にもおすすめです。

会期は5月27日まで!見逃さないで!

国立新美術館にて開催中の『マティス 自由なフォルム』。会期は5月27日まで。

切り紙絵はもちろんのこと、絵画も彫刻もステンドグラスも、マティスの生涯にわたっての製作を丸ごと楽しめる、贅沢な企画展です。大胆で美しい色合いに浸りに行ってみてはいかがでしょうか。

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