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【2200円】50年ぶりの大企画展!『キュビスム展—美の革命』が魅せるキューブ化した世界

なんとなくハードルが高いと思われがちな美術館。「どう鑑賞するのが正解かわからない」「知識がないと楽しめないのではないか」というような声を聞くことが多くありますが、実際はもっと気軽なものだと感じます。

今回訪れた、国立西洋美術館で開催中の「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」には、50点以上もの日本初出品作品がずらり。さらに、キュビスムに大注目した展覧会はなんと50年ぶりとのこと。

そんな大キュビスム展を純然たる娯楽として気軽に楽しめるよう、美術素人の筆者視点でハードルを下げてご紹介します。

立方体が平面の世界を作る? なんとなく見える世界が面白い

キュビスムとは、20世紀初頭にパリで創り出された芸術運動です。写実主義、印象派、シュルレアリスムなどは、美術の授業や教養系のクイズ番組でも注目されるため、聞いたことがある人も多いでしょう。キュビスムは比較的近代寄りで、美術史に触れたことがあるとか、キュビスムが好きという人以外は、聞いたことがない人も多いかもしれませんね。

キュビスムは、描く対象物をさまざまな視点から観察し、面や直線で捉えて表現するもの。奥行きや立体感の実際はほとんど無視されているのに、なんとなくどのあたりに何があって、描かれているのはこのモチーフかもしれない、というのが想像できるのが面白いところ。とはいえ、タイトルを見ないと何が描かれているのかわからない作品も、見たってわからない作品もたくさんあります。それもまた面白い。

初期の作品は、落ち着いたトーンの作品が多いように感じますが、若い世代の流入につれて鮮やかな色使いの作品が増え、およそ10年という短期間に発展したにも関わらずバラエティに富んだ作品がたくさん残されています。

筆者も、キュビスムとはなんぞやということは知らずに「なにこれ面白い!好き!」というだけで惹かれて以来いまだに深くはわかっていません。なにか琴線に触れるものがあるのでしょうね。見ているとだんだんと見えてくるものがあり、その発見の感覚だったり、シンプルに表現された作品の持つ余白を想像するのが楽しいのかもしれません。

筆者が2023年に見られる企画展の中でいちばん楽しみにしていたキュビスム展。一般料金のチケットは、2200円で購入できます。

ピカソとブラックが冒険しながら牽引し、発展させてきた世界

キュビスムを生み出したのは、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラック。ピカソはご存知の方も多いでしょう。あの「アビニヨンの娘たち」や「ゲルニカ」を描いたピカソです。ジョルジュ・ブラックは、フランスの画家でピカソとも交流を持っていました。ふたりは共に研究を重ね、キュビスムを発展させました。

ピカソの代表作のひとつである「アビニヨンの娘たち」は、キュビスムの初めの一歩とも言われています。発表前にこの作品を見たブラックは、あまりにふざけているように感じて怒ったそうですが、すぐに「いや革新的だな?!」と考えを改め、自らも「大きな裸婦」という作品を描き、ピカソの後を追いました。

この時期をプロトキュビスムといい、これが1907年1909年春頃。1909年夏〜1912年初頭からの時期は分析的キュビスムと呼ばれています。

ふたりは共通してセザンヌの影響を受けているのも興味深いポイントです。セザンヌの構成的な筆触や、新印象主義の筆触分割などを応用して実験を重ねていったそうで、風景画などは「あー教科書でこういうの見たかも」くらいは、強く影響が出ているように見えます。ブラックの描いた「レスタックの高架橋」はとても平面的なのに、構成がとてもセザンヌ的だなと感じました。

その他にも、アフリカの彫刻などの影響も受けており、この頃のピカソが描いた女性の顔は、アーモンドのような形の目や大きく尖った鼻などが印象的です。実際に彫刻作品も展示されているので、どのあたりがモチーフにされたのかなどを想像するのも楽しいでしょう。

発展的キュビスムを展開していったドローネーの色彩感覚

上野駅公園改札から徒歩すぐの国立西洋美術館。本当にすぐなのに、そこに至るまでにドーンと設置されている、メインビジュアルの看板。

キュビスム展のメインビジュアルとなっているのは、ロベール・ドローネーの「パリ市」という作品。実物は横幅が4メートルを超える、もの凄いサイズ感。明るく豊かな色彩で、パリの街が描かれています。館内では横長の壁にドーンと展示されており、その存在感は「圧巻」以外の言葉が出てこないほど。

2023年に行った別の展覧会でレプリカを見て知っていた「パリ市」。画家の名前を知らない状態で見たのに「なんかいい好き〜」でじわじわと好きになり、今ではロベール・ドローネー作品が大好き。

「都市 No.2」という作品は「パリ市」と比べると茶色がメインで落ち着いた色合いですが、雰囲気がとても好きでした。「都市 No.2」を眺めては「パリ市」はどうなっているのだろうかと振り返ったり、「パリ市」のこの辺りは「都市 No.2」を描きながら発見した描き方なのだろうかと、また見に行ったりするほど。

さらにドローネーは妻のソニアも画家として活動していて、近しい雰囲気の作品を発表しています。妻・ソニアの作品は、アパレルや本などのデザイン系のものが多く、どことなくスタイリッシュな雰囲気でした。個人的に今は、どちらかというと夫・ロベール作品が好きだなと感じています。

1912年春以降、ドローネーをはじめ、レジェやグリスなどが参入し、色彩を取り戻していきました。

東京での会期は1月28日まで。3月から京都へ巡回。

デザインや建築、写真にも影響を与えてきたキュビスム。日本初出品の作品もたくさん展示されており、実物が見られるうえに写真まで撮れるという贅沢な展覧会。

東京での会期は1月28日までとまもなく終了。3月からは京都へ巡回する予定となっています。東京で見逃してしまったら、旅行がてら京都へ見に行くのもいいでしょう。京都の方がお近くだという人は、ぜひ気軽に、キュビスムの不思議な世界を堪能できる「キュビスム展—美の革命」へ、ぜひ足を運んでみてください。

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