埼玉県立近代美術館で2025年2月1日から開催中の企画展『メキシコへのまなざし』。開幕早々に観覧、ご紹介しましたが、本展は3月24日に展示替えがされています。
ということは、3月25日からの後期展示では、2月にはなかった作品が展示されているわけです。見たいですよね。行ってきました。
展示替えに伴い後期に新たに展示された作品と、通期展示で“今回気になった”作品をご紹介します。
版画作品の入れ替えが多め

こちらはメキシコ革命の主導者であるフランシスコ・マデロを骸骨の姿で風刺的に描いたもの。骸骨(カラベラ)は、毎年行われる「死者の日」の祭典のシンボルとして、メキシコ人にとってはとても身近なもの。
メキシカンな帽子(ソンブレロ)を被ってサンダル履きという庶民的な出立ちは、マデロへのある種のユーモアが感じられます。
反革命派に殺害され、大統領としては短命だったマデロ。しかし、メキシコ革命を開始し、ディアス独裁政権を倒した功績は、貧困に苦しんでいた国民にとって大きかったのでしょうね。

物々しい雰囲気を醸し出す《群衆》。まず目を引くのが、強く大きく描かれた口。蜂起し声を上げ、独裁政権に対して反旗を翻しているようにも見えますね。
メキシコ革命を経て展開された壁画運動を牽引したオロスコの作品であることから、民意を扇動する意味があったのだろうと推察します。
埼玉県立近代美術館コレクションも惜しみなく展示

埼玉県立近代美術館のコレクションであるルフィーノ・タマヨの作品も、多くが入れ替えに。前期展示の作品とはまた違った色合いや表情を見せてくれます。
開館当初に形成したコレクションを、前期・後期とおしてたっぷりと楽しむことができました。
通期展示の作品にも新たな出会い

初めに来たときとは違う作品が琴線に触れたり、見え方が変わったりするのも面白いところ。
《月の壁》は、前期は「あらかわいい〜」くらいだったのに、今回は立体感や凹凸の重なりが気になりました。

展示替えで入れ替えになった作品の影響を受けてか、見えていなかったものが見えてきたり、実はこういうことなのかも? という新たな気付きがあったりします。
前期では、メキシコ的なモチーフが描かれた作品に惹かれましたが、今回は《闘牛》。躍動感や色から感じる熱量に加え、見えないはずのスタジアムで沸き立つ観客の姿まで感じられるよう。

芸術の見方や解釈は正解がないものだけに、その日その日のコンディションによって、作品の表情が違って感じるのはよくあること。
各々の感性を持って何かを感じ取るという点では、味覚と似たところがあるかもしれませんね。
全体的な線に丸みを感じる《古代人》。構成するパーツを理解して見たらまた違うのかもしれませんが、どこかデフォルメされたイラストのような愛らしさを感じます。
「メキシコへのまなざし」の会期は2025年5月11日まで。GWのレジャーにもオススメ!

埼玉県立近代美術館は、JR北浦和駅から徒歩約5分。駅前のロータリーの向こうにもう見えるので、迷わずたどり着けます。
広い公園の中にあるので、晴れていればお外で遊ぶのもいいし、彫刻作品も点在しているのでお散歩してみるのも楽しいかも。

実は埼玉とゆかりの深いメキシコ。絵画や写真などをとおして、文化の交わりに触れてみてはいかがでしょうか。
『メキシコへのまなざし』
会場:埼玉県立近代美術館
会期:2025年2月1日(土) ~ 5月11日(日)
※会期中一部展示替えがあります。
前期:2月1日(土)~3月23日(日)
後期:3月25日(火)~5月11日(日)
休館日:月曜日(ただし、5月5日は開館)
開館時間:10:00 ~ 17:30(展示室への入場は17:00まで)
観覧料:一般900円(720円)、大高生720円(580円)
※( ) 内は20名以上の団体料金
※中学生以下は無料
※障害者手帳等をご提示の方 (付き添いの方1名を含む) は無料
※企画展観覧券(ぐるっとパスを除く)で、併せてMOMASコレクション (1階展示室) も観覧可。
埼玉県立近代美術館 公式サイト