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【1400円】『戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見』vol.2〜「経済の奇跡」を起こした、商業/国際的イベントのグラフィックデザイン

本記事には、撮影不可の作品画像が含まれます。取材に際し、特別に許可を得て撮影しています。

展覧会の概要をお伝えした前回に続いて、vol.2となる今回は、1950年代の西ドイツの経済復興を「経済の奇跡」と言わしめる立役者となったグラッフィックデザインをご紹介します。

戦前から脈々と受け継がれてきたデザインや、芸術と文化の復興を目指して制作されたものなど、成り立ちはさまざまです。

コーポレイト・アイデンティティを表現するデザイン

戦後西ドイツで大きな発展を目指した「ルフトハンザ航空」。

濃紺と山吹色を基調色として鶴を描いたルフトハンザのロゴ。1918年にオットー・フィルレによって、ルフトハンザの前身であるドイツ空軍レーデライのためにデザインされたロゴに起源を持っています。

1960年代にオトル・アイヒャーがコーポレイト・アイデンティティとしてルフトハンザのデザインを整えていき、このロゴは現在も使用されています。

ルフトハンザ宣伝部/ルフトハンザ - 日本(1964〜1965年)/A5コレクション デュッセルドルフ蔵

こちらは日本旅行向けのポスター。端的に日本らしさが見て取れますね。

今でこそ、日本人もなかなか行かない都市にも人気が集まっていますが、海外の方の日本のイメージといったらやはり大仏や寺院など、わかりやすい日本だったのでしょうね。

展示風景

こちらはパンフレットなど。シンプルなタイポグラフィのものから、世界中を旅する航空会社らしい、地球を彷彿とさせる美しい曲線のグラフィックのものまで。

“脱ナチスカラー”が押し出されたミュンヘンオリンピック

ナチス政権下ではスポーツが盛んに奨励されており、1936年ベルリンオリンピックはナチス色の非常に強いものでした。

そのイメージを払拭して新しいドイツをイメージさせるデザインを目指し、テーマカラーはパステルを基調としたものが使用されました。

オトル・アイヒャー/ミュンヘン オリンピック 1972(1971年)/A5コレクション デュッセルドルフ蔵

さまざまなグラフィックを1枚に集め、カラフルで遊び心のあるデザインが印象的なこちらのポスターは、戦後初のドイツでの開催となった1972年ミュンヘンオリンピックのもの。

ナチスからの脱却という色合いが強く押し出されたこの大会の主任デザイナーは、競技場から街の装飾まで、オルト・アイヒャーが手がけました。

ポスターの下から2段目にあるダックスフントのイラストレーションは、夏季オリンピック大会初となる大会マスコットキャラクターの「バルディ」。今でこそ当たり前にいる公式マスコットですが、意外と近年に生まれたものだったんですね。

オトル・アイヒャー/ミュンヘン オリンピック 1972(1971年)/A5コレクション デュッセルドルフ蔵

戦前の大会から用いられていたピクトグラムも、より洗練されたものにブラッシュアップされました。

ピクトグラムは、東京オリンピックでも、秀逸なパフォーマンスとともに大きな話題になりましたね。見比べてみても面白そう。

展示風景

オトル・アイヒャーのデザインによる冊子も展示。どれも可愛いので一見の価値アリです。

セーリングフェスが権威あるデザインコンペに

ドイツ北部の都市キールで毎年開催されている世界最大規模のセーリングフェスティバル「キール・ウィーク」は、大会出場者だけでなくクリエイターにとっても大きなイベントでした。

(左から)ミヒャエル・エンゲルマン/キール ウィーク 1965、ドリス・カッセ・シュリュター/キール ウィーク 1985 、ハンス・ヒルマン/キール ウィーク 1964、メンデル&オベラー/キール ウィーク 1986/すべてA5コレクション デュッセルドルフ蔵

というのも、キールウィークのビジュアルデザインは、コンペ形式で決定されるもの。国際的に大きな大会のため、それはクリエイターにとっても一大イベント。

1950年から始まったデザインコンペは、当初はプロアマ問わずに応募できるものでした。しかし出品数の増加から収拾がつかなくなり、1958年以降は専門委員会から招待されたプロのデザイナーかデザイン事務所としてのみ参加が可能となっています。

展示風景

幾何学模様を用いたデザインが多く、全体的にシンプルな印象。画像左下のピンクの冊子は、髪の毛を波に見立て、その上をヨットが航行しています。

波やヨットのほかに、太陽をモチーフにしたデザインも多く見られます。

シンプルなものばかりかといえば、そんなこともなく。その年に採用されたクリエイターの得意分野により、タイポグラフィやイラストレーションを前面に出したデザインの年もありました。

世界的現代芸術祭「ドクメンタ」の持つ意図

(左から)カール・オスカル・ブラーゼ、アルノルト・ボーデ/展覧会「ドクメンタ4カッセル’68」、ユップ・エルンスト/展覧会「ドクメンタ3カッセル’64 工業デザインのグラフィック」、カール・オスカル・ブラーゼ/展覧会「ドクメンタ6カッセル’77」/すべてA5コレクション デュッセルドルフ蔵

ドイツ中央部に位置するカッセルで4年または5年に1度開催される「ドクメンタ」。開催地であるカッセルは東ドイツとの国境も近いため、社会主義圏に対して、資本主義圏としての西ドイツの芸術を顕示する意味合いもあったそうです。

第1回が開催されたのは、まだ第二次世界大戦の戦禍の痕が残る1955年。戦後西ドイツの芸術と文化の復興であり、ナチスにおける近代美術弾圧に対する反省と解消の意図と、ドイツを国際的アートシーンと結びつける目的を持って開催されました。

いくつかご紹介した作品を見て、デザインの構成要素のシンプルさにお気づきの方もいらっしゃるでしょうか。

次回vol.3では「幾何学的抽象」「タイポグラフィ」を主な構成要素とする、こう見えますか! と思わされた作品をご紹介します。

『戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見』

⚫︎会期
 2025年3月8日(土)〜5月18日(日)

⚫︎時間
 10:00 〜 18:00 (入館は閉館の30分前まで)

⚫︎会場
 東京都庭園美術館(本館+新館)

⚫︎休館日
 毎週月曜日

⚫︎観覧料
 オンラインによる事前予約制を導入しています。
 ◆観覧料一覧
  一般 1,400円
  大学生(専修・各種専門学校含む) 1,120円
  中学生・高校生 700円
  65歳以上 700円
  ※別途団体料金の設定あり。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。

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蓮水おり(ori hasumi)

美味しいものと美術展とライブをテンション高めに楽しむワーママでバンギャ。コーヒー歴15年超の、J.C.Q.A.認定コーヒーインストラクター2級。12星座をモチーフにしたオリジナルブレンドのコーヒー屋を営んでいます。

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